神 出(かんで)
すぐに登れそうでも、登りはじめるとなかなか頂上に着かない。むせかえるような落ち葉のにおい。木立の間を吹き抜ける早春の風が心地よい。やっと、30年ぶりの頂上に到着。小さな石の祠があるだけで、まったく当時と変わったところはない。汗の引いたところで、雌岡山を目指す。麓の雄岡山登り口のバス停のところに、焼き肉屋さんの看板があり、現実に引き戻される。
昔、鬼が雄岡山と雌岡山を持ち上げようとしたが持ち上がらず、金棒を投げ捨てたその痕が、金棒池になったといわれているが、この池はどう見てもため池ではないのか。その証拠に池の中に古墳がある。それに、鬼の金棒は武器で、物を担ぐ天秤棒ではない。そんなくだらないことを考えながら歩いているうちに、山道にかかる。どこからか、牛のにおいがしてくる。自分の過去のどんな記憶と結びついているのか、実に懐かしいにおいである。しかし、頂上に登りついて、驚いた。神出神社の裏側に、大きなアンテナが立っているではないか。
付近のひとが天王山とよんでいるこの山は、筑波山や二上山、天香久山に匹敵する聖なる山だと思う。大己貴神(おおあなむちのかみ、大国主命)が、この山に降臨し、多くの神神を産んだという伝承があり、この山の赤土で作られた土器の破片が麓のあたりで多く出土する。また、ごく最近まで山中に、カタクリ、その他の薬草が生えていたというから、まさに、仙境だといえるのではないか。
神社からの展望は絶景。ニュータウンや明石大橋を無視すれば、風土記の世界がむかしのままひろがっている。神社の北側を少し下ったところにある裸石神社に立ち寄ってみる。ここは、古代の素朴な信仰の名残をみることができる不思議な空間だ。もしも、風土記明石郡が残っていたら、どのように記載されていたのか。
山を下って、バスに乗ろうとしたら、国道175号は交通渋滞をおこしていた。幸いなことに、そのあたりからアンテナは見えなかった。
【JR 明石駅よりバス・神出老ノ口(おいのくち)下車】
【神戸電鉄・緑が丘下車】
- 雌岡山麓に、法道仙人開基になる古刹最明寺があります。
- 雌岡山は、頂上の神社まで車で登れます。徒歩で登るには、雑木林が明るく、見通しのきく、冬、初春が最適かと思います。
- 写真は、金棒池から東方の雄岡山の方を見ています。下の写真は、稲美町の方から
雌岡山をみたものです。こちらからは、雌岡山が三角形にみえますが、ふつう神出富士といえば、雄岡山のことです。