バリ島にて
この劇の主役は、聖獣バロンです。劇の冒頭でこのバロンが
ガムラン音楽とともに周囲を威圧するように登場するのですが、すぐに
このバロンの姿、形が愛媛・南予の牛鬼によく似ていると思いました。
これは、みる人によっては牛鬼以外のもの、たとえば、それぞれの
郷土に伝わる獅子舞などを連想したかもしれませんが、
なぜか、一見してわたしには牛鬼にみえたのです。
ただ、牛鬼は、人間に対して善玉か悪玉か判らないといういかにも日本的な
一面があるのに対して、バロンはどのような場面でも常に善玉のようでしたので、
性格は少し違うかもしれません。
さて、少しその気になって見ていたからでしょうか、
劇が少し進行したところで、今度は、二人のナマハゲのような
ものが現れました。どうみてもわれわれには、秋田・男鹿半島のナマハゲと
区別がつかないくらい似ていました。
また、劇の一箇所だけでしたが、人物の所作が、明らかに中国の京劇を連想させる部分も
ありました。また、別の場面では人物の所作やせりふのやりとりが、
博多にわかを思わせる部分もありました。
なかでも、一番興味深かったのは木の枝を振りまわしたり、花を投げつけたりして
悪霊を追い払う場面でした。この霊力を持った木や花について、後にガイドに
質問をしたのですが、残念ながらこちらの意図はガイドに伝わらず、明快な答えは
返ってきませんでした。
ご存知のように、バリ島の「バリ」はいけにえを意味するサンスクリット
であるといわれていますが、一般には「神々の島」として有名です。
人々が、神々とともに生活をしているということでしょうか。
実際、道端にさえたくさんのお供え物がおいてあるので、
クタのような繁華街では大変歩きにくく、ついつい踏み潰してしまうことがあります。
バリの文化と日本の文化が、遠いところでつながっているかどうかはわかりませんが、
ここには、たしかに昔の日本があります。昔といってもそんなに古いことではありません。
どこの家でも、毎朝、朝餉が炊き上がったら、まず神棚と仏壇にお供えしていた、
そんな頃の日本です。
バリでは、伝統的な、多くのダンス、ガムラン音楽、絵画や彫刻など文化の大部分を、
神々への捧げ物と考えることができるそうです。とすれば、日本の文化もそのように
考えてもそれほど不自然なことではないでしょう。